蜘蛛之巣城

「超訳『巨人の星』 花形」

…買っちゃったよ、週刊少年マガジン。

だってさ、立ち読みじゃ限界があるんだもの。
一頁めくるごとに、そこら辺のものを手当たり次第に破壊してやりたくなる衝動に耐えつつ、物凄い形相で背中をプルプル震わせながら立ち読みを続けてたら、カンペキ不審人物だもの。


私さぁ、「花形満が主人公の『巨人の星』」初回80Pと聞いた瞬間、

  • 英国のパブリックスクールから転入してきた花形が、転校初日にいきなり英国仕込みのボクシングで近在のチーマー全員シメた上で、無理やり野球チーム結成。
  • ついでのように、テニス部主将の必殺のスマッシュを野球のバットでホ~ムラン。(ここまでで20P)
  • 類まれな運動能力と明晰な頭脳とカリスマ性で、不良どもを鍛え上げ(ここでノックアウト打法を披露)、高等部の野球部相手に勝利するまでになる。
  • 早くも野球に興味を失いかけたところで、宿命のライバル・星飛雄馬との出会い。(ここまでで50P)
  • 飛雄馬を手駒として利用するため身辺を探ったところで、その父である悲運と執念の男・一徹、および運命の女性・明子との出会い。(ここまでで70P)
  • その智謀で飛雄馬を煽り、自分のチームに迎え入れ、センバツ出場クラスの高校野球部と対戦。予想以上の飛雄馬の剛球と野球への情熱に、虚無的だった花形の胸に眠っていた闘志に火が点く。(次回へつづく)

…くらいのモンは読めると思ってたんですがね。
80ページも使っといて、あの内容のなさは一体何事?!


あの無意味な見開き連発とか、どんな重要性があるのかわからないシーンで、まる1P使って主人公の顔アップとかって、長期の週刊連載で切羽詰ったセンセイだけに許されるページ稼ぎの手法なんじゃないの?

単行本一冊も出したことのない無名の新人が、連載第一回からあんなページかせぎをやって許されるくらい、今のマガジンはヌルいわけ?!!


でさぁ、私が上記のストーリーを思い描いたのは、「花形満が主人公の『巨人の星』」=花形満視点の『巨人の星、つまりアニメの『猛虎 花形満』みたいなのを想定していた訳。

でもどうやら、この「新約『巨人の星』 花形」って、オリジナル版『巨人の星』のストーリーラインの主人公に、「花形満」という名の天才少年を据えた話…ということみたい。
(「主人公」が不良の「赤川くん」にからまれて、ブチ切れて隠していた実力を見せる…というのが、今回の80Pのほとんど唯一の見せ場。オリジナル版で小学三年生の飛雄馬が初めてギプスを見せる場面の翻案にあたる)


この漫画家も担当編集者も、「キャラクター」というものを根本的に心得違いしているよ。
ストーリー漫画においては、物語とテーマとキャラクターは不可分の関係にあるのよ。

テーマをどのように語るかでストーリーと基本設定が決まり、ストーリーをより効果的に駆動させうるキャラクターが決まる。そしてそのキャラクターに相応しいエピソードが決まる。

梶原先生も生前おっしゃってますよ。
「重要なのは『巨人』ではなく、『星』の方だ」と。

まず、「父と子の相克と、少年の自立」 というテーマがあり、「野球選手としての栄光と挫折と克己」というモチーフが選ばれ、それに応じて「星一徹と飛雄馬親子のキャラクター」が生まれ、そのキャラクターを際立たせる具体的なエピソードが作成された訳よ。

星飛雄馬の代わりに花形満というキャラクターを主役に据えたならば、当然主題も物語も、付随するエピソードも、全く別のものになるはずだよ。だとしたら、それは既に『巨人の星』という物語ではありえない筈。

最近の漫画評論でよく言うところの、「キャラクターとキャラの違い」がわかってないよ、マガジン編集部は。


「キャラ」マンガとして評価した場合も、到底及第点は差し上げられない。

だって、「花形満」だよ?

「天才で美形で金持ちで気位の高い主人公のライバル」の原型(ルビ:アーキタイプ)だよ?

どんな気障な振る舞いをさせようが、どんな途轍もない天才振りを発揮させようが、「ンな奴いるかよ」という読者のツッコミを、「だって花形満だから」の一言で封殺できる「格」を持ったキャラだよ?

それが何であんなにショボいの?

「熱い血肉をもって語る荒唐無稽」こそが梶原ワールドでしょうが!

セコくてクソつまんないリアリズムなんか百害あって一利なしだよ。
読者の胸倉をひっつかんで、エキセントリックな情念のドラマの奔流に叩き込むだけの力技のない奴が、『巨人の星』の金看板を掲げんじゃねぇよ。


ふぅ~っ。
花形や明子ねーちゃんもたいがいだけど、この分だと伴宙太や左門豊作もサラサラ髪の美形にされちゃうのかしら。左門なんか、萌え系のメガネ男子にされちゃったりして。
…………………。
…………。
……!!
(↑30秒ほど、自分が書いた文章にショックを受けて意識を失っていた)


そんな訳で、これからしばらくは『巨人の星』語り、梶原一騎語りが続くと思いますが、呆れないでひとつお付き合いを。

…ところで、新約の牧場君は、コミケのスペースとってたりするんだろうか。ジャンルは何だろう(くらくらっ)。