蜘蛛之巣城

Bizenghast ビゼンガスト

bizenghast#7 Bizenghast #7

プリンセスアイの話題を書いた勢いで、もうひとつの難物を片付けちまおう。
多分、TOKYOPOPのOEL-mangaの中で実質的なトップ作品、Bizenghast

Princess Ai は「作られたナンバーワン作品」「売れてる売れてる詐欺」。
自発的なファンコミュも見かけない、作品語りやキャラ萌えトークのブログも見かけない、DA上のファンアートも少ない。しまいにゃanimenewsnetworkに"Is Princess Ai really that popular?"なんて表題のスレッドが立てられる始末。

Dramaconもハードカバーの合本が出るくらい人気が高いけど、既にきっちり完結しており、二次的著作物展開もしていない。作者は既に他社で連載を抱えてる。


一方、Bizenghastは他のOELタイトルが「棚上げ」処置を受けてる中、既刊5巻(全7巻予定)で、近々6巻刊行予定を大きく宣伝されている。更に塗り絵や小説版 、イラスト集が刊行されたり、イメージアルバムがダウンロード販売されたり。

付記)結局、2012年に全8巻で完結。

TPサイトでも明らかに他とは別格あつかい。フラッシュアニメ化されて公式サイトで公開、キャラグッズも販売(どーでもいいが、仮にも一般企業がcafepress利用してグッズ販売って、ちょっとどうかと思うよ。あそこって基本的に同人グッズ制作通販サイトでしょ)。


ここまでされてりゃ、さぞ面白い作品だろうと思うでしょ、普通。
私は思った。で、eBookjapan版の邦訳3巻分を読んでみた。

感想:ナニ書いてあんだか、いっこもわかんねぇよぉぉぉ!!!(叫)


bizenghast#8 Bizenghast #8

読んでて思ったのは、

「これ、mangaよりもポップアップ絵本とか、MYST系のPCアドベンチャーゲームかなんかにした方がいいんじゃね?」

ストーリー性は非常に薄い。
キャラクターに個性や魅力があるわけでもない。
深いテーマ性や斬新な着想があるわけでもない。
絵も素人くさい。

積極的に褒められるのは、各巻のカバーアートがシュールなセンスで一枚絵として良いというところだけ。
あとは、ヒロインの着るクラシックな服がちょっといいくらい。

…でも、ファンの女の子は本気で支持してる。作者のM・アリス・ルグロウはファンの少女達から、一種カリスマ的あつかいをされている。

わっかんね~が、わかんねーなりに懸命に考えてみました。

作者のルグロウはカリスマコスプレイヤーで、同好の少女達から崇拝されている。
ルグロウのDAには、イラストと同じくらいの分量で彼女のコスプレ写真がある。
自作のアクセサリーやコスプレ衣装なんかも通販している。


Polignac Velvet Choker
by sadwonderland on DeviantArt
ルグロウの本職はドレスメーカーで舞台衣装などを制作、こーゆー手作りアクセも通販してます

送り手と受け手の距離が非常に近い。日本の大手女性同人作家とファンのような親密感がある。

そういう濃いぃ崇拝者のコミュニティを核にして、「少女趣味なモノ」を求める周辺消費者も取り込んだファン層が出来ている。


あと、作品自体について。
どう贔屓目に見ても、漫画としての完成度は高くない。
ゴシックホラー趣味の作品ならばヴァーテイゴやインディにもっとクールでレベルの高い作品はいくらでもある。

ただ、何というか、「少女の無意識下の妄念の際限ないタレ流し」のような「表現」を商業作品として堂々と出してしまったのは、「アメリカのコミック業界においては」良くも悪くも画期的なんじゃないかと。

大島弓子の漫画を読んでも「何この電波ポエム」としか思ったことがない私は、ビゼンガストという作品にとっても同様に縁無き衆生な訳ですが。
しかし「いかにもなウケ線狙い」がミエミエでいやらしいプリンセスアイに比べりゃ、こっちの方がよっぽど好感持てます。


ルグロウはビゼンガスト完結後、新シリーズの刊行も決定してるみたいだし、本作の成功を踏まえてもっとストーリー性のある作品を描いてくれりゃいいなと僅かに期待もしていたり。

ただし、日本においては、そういう少女趣味市場は既にもっと洗練され細分化された形で存在するので、今更ビゼンガストを持ってこられてもウケる可能性は皆無でしょう。

付記) TPの出版部門閉鎖により、ルグロウの次回作The Elephant Bookはクラウドファンディングで資金を集めた自費出版となった。
今後は商業出版社からの出版は断念してクリエイター支援投げ銭サービスPatreonとクラウドファンディングのKickstarterを活用して作家活動を継続する模様。

ちなみにTPの宣伝文句だと、セールスポイントは the dreamy guys and awesome fashion(素敵な男性キャラと斬新なファッション)らしいんだ。
ファッションはともかく、魅力的な男性キャラなんて出てきてるかぁ~?アメリカのコスプレ少女にとってはアレに出てくる男が魅力的…なのか……?

うーん。やっぱわからん。
でも、ボンクラ青年の妄念のタレ流しであり、やはり漫画としての完成度はお世辞にも高いとはいえないフェリーペ・スミスのMBQは、結構好きなんだよな私。
自分の中の少女性の濃度で評価が著しく変わってくる作品なのだろうか。降参。白旗揚げましゅ。

Princess Ai―プリンセス・アイ物語

Ultimate Edition #1 Princess Ai Ultimate Edition #1

あまりモチベを刺激しない作品だが、一応解説。

そもそもはコートニー・ラヴが2004年ツアー用にイメージキャラクターのデザインを矢沢あいに頼む為に、矢沢の英訳本を出してるTP経由でコンタクトをとったのが始まり?らしい。

矢沢のデザインしたキャラはツアーグッズ等に使用予定だったけど、コートニーがあーゆーコ~トに~なったため、それどころじゃなくなった?のか、日本版America's sweetheartの外箱に使用しただけで終わった?らしい。

ハテナマークばっかりだけど、イマイチ経緯がわかんねぇ。吹きまくりなシャチョー発言は信用でけんし。


繁華街で行き倒れたプリンセスが歌手として見出されてブレイクして…というような基本コンセプトは確かにコートニーが出したらしい。

ただし各話のネームはTP社長のスチュアート・リヴィがDJミルキーという恥ずかしいペンネームで執筆。
作中の歌詞も、「あのDJミルキー自ら作詞!」。…あのミルキーって、どのミルキーだよ。


The Prism of Midnight Dawn #2 Princess Ai: The Prism of Midnight Dawn #2

実際の作画担当は、鯨堂みさ帆。作画力や漫画文法は申し分ないが、アートスタイルが露骨ながゆんフォロワー。どれくらい似てるかってーと、江口寿史と末松正博くらい。そこらへんもうちょっと何とかしようよ。

とはいえ、基本、鯨堂は頑張ってる。ベストをつくしてると思う。…しかし、作画者がどう頑張ったところで、ネームがタコスケじゃぁフォローのしようがないんだぜ。

メアリ・スー丸出しの設定、類型的で魅力のないキャラクター、ご都合主義の展開、印象に残らないエピソード、直訳調のぎこちないセリフまわし。評価できるのは鯨堂の描くゴスファッションくらい。

あれだけ美麗なカバーアートで、結構話題づくりもしてもらって、なおかつ新書館の単行本がじぇんじぇん売れなかった時点で、売れないのは作品自体がスカポンだから、という判断を下そうよTP。


作品自体の評価は個人の価値観も入ってくるので置くとしても、私がムカつくのはTPのセールス活動の中で「キャラデザイン:矢沢あい」ばかりを言い募って、実作家である鯨堂みさ帆の名前をガン無視してるところだ。

確かにネームバリューで差はあるだろうよ。矢沢の人気を最大限に利用したいのはわかるよ。でも、さすがにアレはないだろ。
同じ実態無視したハッタリをかますならば、むしろ「TPが見出して世界市場でブレイクさせたスター」として鯨堂をフォローすべきじゃね?


TPサイトでプリンセスアイのミュージッククリップを提供したりしてるけど、「コートニー・ラヴ原作のオシャレな音楽漫画」を売り物にしてるのに、そのミュージッククリップにはコートニーもコートニーのスタッフも関係していない(まぁ、今のコートニーはそれどころじゃない訳だが)ってのも、胡散臭さにターボをかけてるし。

サテライトにアニメのパイロットフィルムまで作らせたんですが…
ヒネリのない厨2センスの痛いこと痛いこと

実写パートの安さと音楽センスがこれまた…

TPはしばらく棚上げしてたプリンセスアイをまたぞろ引っ張り出して、本職のライター雇って新シリーズを始めたんだけど、今度は少しは読める作品になってるのかしら。

世界観シェアして、本シリーズ以外のスピンオフ沢山つくってキャラクター一杯出して…という、出版社主導の商売をするなら、神獣学園白書《パンテオン》Pantheon Highの方が使い勝手がいーんじゃないの?作家が外様だから駄目なの?(作品単体では色々欠点は多いけど、広がりを持てる設定の話なんだよね。勿体無い)