蜘蛛之巣城

とうに黄昏を過ぎて

コミカライズ版Twilight

Twilight#1 Twilight: The Graphic Novel #1

こないだっからちょくちょく話題にしてるコミカライズ版Twilight
発売予定は三月なのに、初版35万部を刷ると今から超強気のアナウンス。

ちなみに北米ネット書店三強の予約販売価格。カバープライス$19.99のところ…

  • BORDERS $10.79 (save 46%)
  • Barnes & Noble $10.79 (save 46%)
  • Amazon $10.99 (save 45%)
付記1) 25日に再チェックしたら、アマゾンは $10.00 (save 50%) になってた。チキンレース凄すぎるよ!
付記2) 27日には $9.00 (save 55%) に!アマゾンさんは全く死を恐れていないぜっ!!
付記3) …と思ったら、2月の15日にはボーダーズ、B&Nと足並みを揃えて46%引きに。闇カルテル??
付記4) 3月に入って再度5割引に値下げ。裏で激しい攻防が?

大型店のベストセラー本予約価格ダンピング合戦については、カレントアウェアネス・ポータル(国立国会図書館のサイト)をご参考に。

付記) 北米地方都市の一般書店の現状…
書店がなくなった地域で図書館が奮闘(米) Posted 2010年2月12日

この手の本は「書店」だけではなく、Wal-MartやTargetのようなディスカウントショップが主流の売り場なんですね。

ちなみに北米の基準だと、日本のように雑誌やマンガ、文庫本が主な品揃えの本屋は「書店」にカウントされません。ドラッグストアや駅のスタンド売りと同じ扱い。
書籍=ハードカバー。
ペーパーバックライターとノヴェリストは明確に文化的カーストが違います。


今回のコミカライズ版トワイライトは、manga出版部門のYenPress レーベルじゃなく親会社のHachette名義で、しかもハードカバー(原作小説もHachetteから刊行)。
Twilight: The Graphic Novel, Volume 1
と、mangaじゃなくてGraphic Novelの表記を押し出してる。

これは2009年後半に入ってからYenPress/Hachetteが打ち出している戦略の一環のようです。場当たり的な「戦術」じゃなくて大局的な「戦略」ね。

追記:コミカライズ版Twilight、その後

Twilight#2 Twilight: The Graphic Novel #2

2014年追記:
大騒ぎの末スタートしたグラフィックノベル版トワイライトですが、どうも実態が良くわからない。

初版35万部という数字は、原作小説4巻の初刷りが320万部というところから、原作ファンの10人に1人は買うだろうという皮算用から決定されたらしい。

ちなみに通常、グラフィックノベルの初刷りはダイレクトマーケット・一般書店合わせて2万~2万5千部程度。
参考までに、08年に映画公開に合わせて刷られたソフトカバー版ウォッチメンは90万部。内コミックブック専門店での配本分は17万部

トワイライトGNの初週販売数は6万6千部。

確かにグラフィックノベルとしては良好な販売数だが、同年7月に刊行されたScott Pilgrim vol.6 初刷り10万部が数日で完売、5万部増刷決定という勢いに比べると、見劣りがする。

作品…というか、商品の性質上初動が全てと思われるトワイライトGNは、どう見ても合計で10万部以下しか売れていないのでは…?
本当に初版35万部刷ってしまっているなら、在庫がものすごいことになっていそうだが。 大型書店での予約状況を見て、実際の刷り数はもっと落としているんじゃないかと。


New Moon#1 New Moon: The Graphic Novel #1

そのVol. 1 が2010年3月発売、Vol. 2が11年10月、原作2巻目のコミック化であるNew Moon Vol. 1が2013年4月発売、Vol. 2が15年4月発売予定…。
熱心なファン以外には「まだ続いてたんだ?」という感じの展開。

付記) 2016年11月現在、未だNew Moon: The Graphic Novel #2 は発売されていない。ウェブにはファンの憶測が乱れ飛んでいるが、公式側からの文章による正式なアナウンスはない。
出版社のイベントで「作画者病気療養の為」という発言があったという記述もあったが、どこまで本当なのかは判断つかず。

詳しい人に聞いてみたら、作画のかなりの部分が映画スチルをトレスしたもので、背景等は写真にフォトショップ加工を施してそのまま使っているので、実質「ちょっと手のかかったフィルムコミックス」のような感じだそうで。
色の乗せ方とかは面白い効果が出てるとは思うんですけどね。

話題性に期待してか、2010年11月にソフトバンククリエイティブから日本語版が出たのですが、驚いたことにハードカバー224ページで¥1,995という価格。
いや、まあ、アメコミの邦訳版をばんばん買ってる私が驚くのもどうかと思いますが。ヤングアダルトの女性向け作品でこの仕様なのか…。

しかも、タイトル以外は完全に隠れてしまう極太の帯に映画のスチル写真を大きく印刷したものを巻いて出荷。
完全に映画版のファンの為のコレクターズアイテムですなぁ。

日本での売れ行きに関しては、続刊が未だに出ない事、その後安価な電子書籍版が販売されたものの2014年現在では配信中止になっている事などを考えると、「コケた(しかもかなり盛大に)」のだと思われ。
そもそも日本では、原作小説も映画も大してヒットしていないし…。


とはいえ、作品自体に対する私の個人的な評価はさておき、ステファニー・メイヤーの『トワイライト』シリーズが英語圏のポップカルチャービジネスに与えた影響は巨大なものがあります。

「パラノーマルロマンス」「少女向けヤングアダルト小説およびそれを核としたマルチメディア商売」「購買力の高い女性ギーク市場という未開拓分野の発見」

(私のホームグラウンドであるヒーローコミック界でも、一時、「イケメンの吸血鬼を出しゃぁ、女どもが本買ってくれるべ?」と勘違いした編集が愉快な迷走っぷりを見せてくれてましたわ。)

そして、トワイライトから派生した「マミーポルノ」ことE L ジェイムズ の『フィフティ・シェイズ』シリーズ。
「ファンフィクションの商業化」「女性向けポルノ、SMエロチカ」

市場を形成し、いくつものレーベルを新たに誕生させた作品パワーについては、謙虚に評価した上で、きちっと分析しておくべきではありますな。

Spice and Wolfと「パラノーマルロマンス」

Spice and Wolf Spice and Wolf, Vol. 1

2009年12月にYenPressが『狼と香辛料』原作小説の英語版Spice and Wolfを出したのですが、文倉十のイラストを使わず一般的なペーパーバック小説調の装丁に変更。
9月にこの仕様が公表された段階で、YenPressの公式ブログ大炎上。

更に文倉イラストのカバーを月刊誌Yen Plus 12月号の付録に付けるとアナウンスしたら、また「悪徳商法!!」と大炎上。
確かに定期購読じゃないとアメリカの雑誌ってすごい割高だけど…それくらい買えよファンなら。支えろよ業界を。

結局、一部ネット書店で予約購入すると折り目なしのカバーが特典で付く処置で収めたけど、未だに選民思想のオタクどもはグズグズ言い続けておりますよ。

こいつらの論客気取りの言動が不快で不快で…。
「違いの分かる俺様は、こんなまがい物買わずにネットでファントランスレーションを読むぜ!」
とか自慢してるクソガキ、目の前に来い。karateチョップかましたる。


オタ絵を外して一般的なペーパーバックの装丁にするのは、オタク市場だけではなくもっと広い層に売り込もうという戦術で、そのこと自体に対しては理解を示すファンもいた。でも文句を言ってる連中に言わせると

「うちのオカンがベッドの下に隠してるエロいパラノーマルロマンス小説みたいで恥ずかしくて持ち歩けない」

「S&W は経済学を主題にした知的な小説なのに、こんな表紙にしたのはパラノーマルロマンス売り場に置かせてトワイライト厨のバカオンナに売りつけるつもりなのか」

…海外SFの日本語版の装丁も、真逆のベクトルで相当恥ずかしいけどな☆

付記1) その後リサーチの結果、パラノーマルロマンス本の表紙=上半身裸の男の腹筋写真をモノトーン処理というのが黄金パターンの模様。

パラノーマルロマンスジャンルというのも、FT要素を上手くメタファーとして取り入れているきちんとした作品もあるが、売れ筋と見て参入者が増えたために「単にFT要素を無茶なエロ展開のダシに使ってるだけ」のゴミ作品が市場に溢れ、「パラノーマルロマンス=アタマの悪い負け組オンナのズリネタ本」 という一般イメージになっちゃってるっぽい。

「あんなのと一緒にされたくない」という気持ちもわからんでもないが、ジャンルに貴賎はないぞ。差別と選民思想はポジティブな未来につながらんからヤメれ。
付記2) 更にその後、あんな形で支倉凍砂が「シッポを出す」とはww

Gossip GirlとChick-lit 漫画

Gossip Girl: For Your Eyes Only Gossip Girl: For Your Eyes Only #1

更に月刊誌Yen Plus 12月号からセシリー・V・Zのベストセラー小説で、TVドラマがブレイク中のGossip Girlコミカライズが連載開始。

トワイライトゴシップガールも女性向けベストセラー・ヤングアダルト小説で、ワーナー系で映像化されて大ブレイク、奇しくも日本語版はヴィレッジブックスが出版という共通点があります。

しかしトワイライトはパラノーマルロマンス小説、ゴシップガールChick litと呼ばれるジャンル(ブリジット・ジョーンズの日記とかセックス・アンド・ザ・シティアリーmy Loveフレンズあたりが該当。さっき確認したら、Wikipediaでは11カ国語で項目が立てられているのに日本語版には項目が存在してなかった。確かに訳しづらいけど)。

処女こじらせた夢見がちな文学少女向けファンタジーと、目指せ勝ち組セレブ系イケイケどんどん小説(これはこれでファンタジーだ)で、対象読者は真逆。日本で言ったらテレ東深夜と月9くらい真逆。

プレビューをYenPressのサイトではなくMTV.comで公開するあたり、どういう読者をターゲットにしているかは明白。
パリス・ヒルトンが雑誌のインタビューで言及したせいで企画に対しての注目は集まったらしいけど、小説やドラマのファンがわざわざソレだけを目当てにギーク雑誌のYenPlusを買うかねぇ。

大雑把に言えば同じギーク文化圏内のトワイライトより、こちらの展開のほうが「(広義の)漫画というメディアの北米への拡散浸透」を計る意味で個人的に興味深いです。