蜘蛛之巣城

アメコミ・ファッション通信

wonderwoman Wonder Woman #600

三ヶ月ぶりの本丸更新です。

DCがワンダーウーマンの600号を期にコスチュームの全面刷新を敢行。

デザイン担当は天下のジム・リー様なんだけど、これが正直威厳も何もない上、ダッサダサでブーイングの嵐。

参考外部サイト:Makeover for Wonder Woman at 69

私もこのネタにからめてフィメールヒーローとウーマンリブとフェミニズムについての文章を書こうと試みていたのですが、なかなか上手くまとまらず。

考えあぐねていたところに、面白い記事が。

男のアーティストときたら!

インダストリアル・デザイナーのSonia Harris女史がジム・リーのデザインセンスを力いっぱいディスっていらっしゃいますよww

参考外部サイト:Committed: Jim Lee’s Lack of Wonder
When was the last time a woman asked a geeky man to help her buy clothing (other than maybe some fetish wear)?
(大体、自分が服を買う時にキモオタのアドバイスを求めるような女なんているのかしら[フェチ衣装は別として]?)
Men have a tendency to take one glance at mall fashion in their teens, and never look again. Never was this more obvious than in comic books, and the new Wonder Woman costume has to be the pinnacle of this kind of folly.
(そもそも世の男というものは、自分が十代の頃に流行っていたファッションセンスで刷り込みされてそれっきりなのよね。コミックブックもご多分に漏れずで、新しいワンダーウーマンの衣装がそのアホ傾向の最たるもの)
In comic books luckily men are rarely called upon to draw civilians, but when they do, men consistently draw women in clothing that would only have worked 10 or 20 years ago.
(幸いコミックブックでは一般人が登場する場面は少ないんだけど、いざそういう場面になると、男のアーティストときたら、決まって10~20年前に流行った服を描くのよ)

私も以前からちくちく書いてるけど、アメコミって肉体描写は素晴らしくても、私服がすごく残念なのが多い。

絵師&読者の大半が男性なのと、アメリカ人のファッションセンスがアレなのが原因だと思うんだけど。


とはいえ、日本の少年漫画も80年代以前は「終戦直後かよ?」 っていうファッションセンスだった。

ヒロインはブラウス+スカートかギャザーのワンピースくらいしか着てなかった。
あだち充がファッション誌を資料にしてヒロインにハマカジを着せたり、鳥山明や江口寿史が出てきて独自のセンスで時代の最先端ファッションを描くようになってから、「少年誌でも一応流行を抑えた服を描かないと絵描きとしてセンスを疑われる」という空気が出来たけど。

少女誌は少女誌で、これも70年代半ばくらいまではリカちゃんドレスみたいなのを着た絵が多かったような?流行に敏感な作家と全く興味のない作家の両極端が混在してる感じだった。

ハリス女史のファッションチェック続き

「カットオフボレロのジャケットって、80年代に一瞬流行ってそれっきりよね。あれってお尻の小さい人が体型カバーするのには便利だけど、WWは立派なお尻をしてるじゃない。何で今時フラッシュダンスみたいな格好をしなきゃなんないの?」

私も乙女時代に着たなぁ…めいっぱい短い丈のボレロ。短足チビには似合うんだ、あれ。


「チョーカー…。90年代初めに流行ったわね。今でも時々下着モデルがつけてるけど。リーはきっとそれを参考にしたのね」

もうやめて!ジム・リーのライフはゼロよっ!!

基本コンセプトはDC指定で、絵師だけの責任じゃないと思うんだ……多分…。

ウィリアム・ツッチー先生のこと

SHI Shi: The Way of the Warrior #5 より

いやぁ、それでもジム・リーは、アメコミアーティストとしてはマシな方だと思うんだけどね…。

ヒーローコミックで私服にまで気を使った作画をしてる人って、ウィリアム・ツッチーくらいしか思いつかない。

この人のデビュー当時(94年)、シモキタのGOLDEN COMICSでSHIのvol.5を立ち読みして、冒頭の数ページで「この人、他の作家とマインドセットが違う!」と衝撃を受けてTPBと既刊を即買いした。

ツッチー先生は元ファッションイラストレーターで州兵の落下傘部隊出身という異色の出自で、下積みもなしにインディ出版社を興して、しかもいきなりフルカラーのシリーズを立ち上げて完売、という当時では信じられないようなデビューを飾った伝説の男。

その後凝り性と遅筆とが祟ってオリジナル作家としては大成はしてくれなかったけど…(ビクトリア・クロスの本編はどうなったんだよぉ~)。最近は大手で色々作画担当してますが。


heroesforhire Heroes for Hire #4 より
フィメールヒーロー達のモデル歩き

でもファッションイラストレーター出身なだけあって、女性キャラはまともな服を着てるし、男性キャラの背広もキャラの社会的地位に従って仕立ての違いが感じ取れるような描きわけができてる。

自由業で自分が普段着ないせいなのか、背広がまともに描けないアーティストって多いから…。

William Tucciの作画は、衣装だけでなく女性キャラのポージングや表情がファッション誌から抜け出てきたかのようにおしゃれでカッコ良かった。
それ以前のアーティストが描いていた男性誌のセクシーグラビア風の絵とは明らかに一線を画していた。

「バッドガールもの」文脈で語られる事が多い人だけど、こういう所ももっと評価すべきだと思うな。

DCもデザイン頼むなら、せめてツッチー先生にしときゃ良かったのに。「天下のジム・リーの仕事なら文句あるまい」って判断なのかしら。

フィメールヒーローのアイコン

ハリス女史の指摘で面白かったのは、

「アメコミ世界においては、素で強いヒーロー程衣装がシンプル(服で防御する必要がないから)。 例えばシルバーサーファーやドクターマンハッタンは全裸。
WWもフィメールヒーローとしては別格の存在なんだから、コスチュームは肌出してて問題なし」

っていう処。

「ヒールぬがなきゃ戦えないようじゃダメなのよー(ミラージュ騎士団No.10 スパーク談)」ですよっ!

むしろコスチュームチェンジの方向性としては、マニッシュなパンツスタイルより、フェミニンなスタイルの方がいいんじゃね?


ハリス女史も他の論客も声を揃えて言ってるけど、ワンダーウーマンというのはアメリカン・フィメールヒーローのアイコンであって、好むと好まざるとにかかわらず、あの基本デザインは軽々しくいじっていいもんじゃない。

今時の都市に生きる女の抱える問題についてリアルに突っ込んで描きたいなら、Birds Of Preyあたりでやればいい。

WWは時代を超越した永遠の女神であり、古今東西の全ての女の持つ力の象徴なんだから。

…とはいうものの、WW単独タイトルの売り上げが厳しい上、オリジナルアニメの売れ行きも悪く実写化企画も難航+アメコミ業界女性読者獲得戦略の迷走もあり…で、今回の暴挙なんだろうけどね。

いずれにせよ、今回のコスは短命で終わりそう…。

便利な参考資料:ワンダーウーマンのコスチュームのあゆみ
Agent of S.T.Y.L.E. - WONDER WOMAN (for her 70th Birthday)
Agent of S.T.Y.L.E. - WONDER WOMAN pt 2 With Phil Jimenez

追記:超高速で生足復活

Violent Beginnings Wonder Woman #93(1995年)
ダイアナは右の方

そして万人の予測通り、あああっという間に生足に戻りました。

パンツスタイルの実写TVドラマ企画がパイロットフィルムだけでコケたのもデカいけど、やっぱり読者から不評過ぎたようで。

ちなみに私がWWの単独タイトルを初めて買ったのは1995年頃。

当時のアメコミ界が「バッドガールブーム」に沸いていたお陰で、ダイアナはWWの称号をアルテミスに奪われてこんなスタイルになってました。


それ以前の60年代後半にも、流行に乗ってモッズファッションになってた時期もあるし、長いキャラクターの歴史の中ではたまの迷走もご愛嬌でしょうか。