蜘蛛之巣城

独逸MANGA

DAISUKI休刊?!

北米のmanga系オリジナル作品の商業出版事情は相当厳しいのですが、ヨーロッパではそんな事もなくスペイン・フランス・ドイツあたりは結構元気…という記事を書こうとちょっと現状確認したら、ドイツの月刊少女manga雑誌DAISUKIが今月で休刊ですとお?!

休刊告知の記事に

Das letzte Manga-Magazin auserhalb Asiens verabschiedet sich
(アジア圏外最後のマンガ雑誌からさようならのごあいさつ)

ってあったけど、非アジア圏のmanga雑誌はこれで全滅?
北米のShojo BEATYEN+くらいしか知らないんで、他のヨーロッパ圏でどうなってるのかわからないんだけど。

Carlsen社が出版していたDAISUKI は白泉社系人気少女漫画作品(星は歌うヴァンパイア騎士学園アリス等)の翻訳&ジャパニーズポップカルチャー紹介記事&ドイツの新人漫画家の読切で構成されてて、北米の雑誌よりバランスのいい構成だと思ってました。
北米のJUMP(旧紙雑誌版)とかは、こっちの感覚でいうと雑誌というより「(カタカナ語でいう)アンソロジー」って感じだし。

Carlsen社の新人manga-kaコンペ

北米のTOKYOPOPが紙出版事業から撤退(最近オンデマンド出版に乗り出しましたが)した後も、ドイツTPはいたって元気。現地作家のオリジナル作品もコンスタントに出してます。

が、独TPのOGL-mangaは描きおろし単行本形態、しかも編集者がほぼ作家野放し状態なのか玉石混交率がハンパなく…正直、商業出版レベルじゃないものも結構あったり。


2011年ライプツィヒ・ブックフェアでのCarlsen社主宰による新人mangakaコンペを報じたニュース。

一方Carlsen社はwww.mangaka.deで大々的に新人募集をかけた上でまず読みきりを描かせてDAISUKI 誌に載せ、文庫サイズ単行本のCHIBIを出したり、読者の反応を見て連載化・単行本化…という日本スタイルで作家を育てていて、好感を持っていたのですよ。

ちなみにこのCHIBI、通常のmanga単行本が18,4 x 12,4 x 1,2 cmなのに対して14,4 x 9,4 x 0,8 cmの小型フォーマット、ページ数も60ページ程度、値段は1.95ユーロ。出版社的にはあんまり儲けの出るスタイルじゃないだろうし、更に最近のタイトルはAmazon Kindleで無料公開してるので、純粋に新人プロモーション企画なんだろな。

DAISUKI 休刊でむこうの新人が即困る事もなさそうだし、CarlsenやTOKYOPOP.de以外にもOGL-mangaを出している処は色々ありますしね。

インディーズのエロス系manga

Hungry Hearts Band05
Hungry Hearts Band05

例えばインディーズのSchwarzer Turm Comics

年に1回OGL-mangaノンテーマ(少女漫画寄りなのは編集方針じゃなくて描き手の多くが少女漫画志向の女性作家なせいと思われ)アンソロPaper Theatre
純正少女漫画のテーマ別アンソロBlutentraume
16禁のエロス系少女漫画アンソロHungry Heartsを出してたり。
Amazonでも購入可ですが、同人に近い形態なので部数は極少でしょう。

Hungry Heartsはこっちでいうティーンズラブとボーイズラブが混在してるアンソロでしたが、
1~3がTL、BL、GL混在
4が百合特集…てか、ゲイとかレズビアンとか書かずにYuriとかShojo-aiと書くのはヘテロの読者がセックスファンタジーとして楽しむ同性愛エロ漫画というニュアンスなのか?
5が特集ボーイズラブでハロウィン…なんか段々カオースにw

ボーイズラブは人気があって、BLアンソロ専門(最近は百合もあつかいだした)のFireangels Verlagとか。どーでもいいがショップの名称がYaoiShop.deてのはストレート過ぎないかいっ?!

その他の商業レーベル

Soul Sanctum Band02
Soul Sanctum Band02

manga系専門出版社以外でもKnaur TB - Comicstarsというレーベルで2010年頃に連続してオリジナルmangaを少年・少女・ホラー・BLとりそろえて8タイトル程出していたが、こちらはレーベル終了したらしい?

ファンシー&ゴスの少女漫画やグッズを出してるインディーButter & Cream Verlagsgesellschaft Ltd.なんてのもあったり。ほぼ同人に近いインディーは掘り出すとキリがない。

ややメジャーどころではEgmont社のVIZ系漫画を翻訳出版している部門Egmont Manga + Anime Gmbhが、他社ではTamasaburo名義でイラストやアンソロ参加をしてきたKim Liersch作画の長編作品Soul Sanctum(原作Rene Paulesich)やFight!(原作Roda Makmod)などを出したりしている。

ドイツTokyopop

Nightmare Hunter Nemo
Nightmare Hunter Nemo

しかし何やかや言っても恐らく部数が多いのは独TPと思われ。

独少女漫画界で一番人気と思われるナタリー・ヴォームスベッヒャー Natalie Wormsbecher やアニケ・ハーゲ Anike Hageはここで長編を年1~2冊ペースで出しつつ他社にゲストというパターン。

少女漫画中心のドイツmanga界ですが、最近は少年漫画家も育ってきて、2008年創刊のインディーというかほぼ同人誌の少年漫画アンソロShounen Go! Go!出身のMartin Geierが今年tokyopop.deからNightmare Hunter Nemoで単行本デビュー。
すんごく少年ジャンプテイストな作品。現時点でもかなり達者だし、数描けば確実に伸びそうな新人で、TPも売り出しに力を入れてる。

mangaの定義問題

…ところで、今回色々調べていて気付いたのは、ドイツにおいてmangaという単語が示す範囲。

DBやセラムン、ナルトがmangaと呼ばれるのは当然として、中国韓国の漫画作品、OGL-mangaも割とスンナリmangaにカテゴされてる。英語圏のような血で血を洗うmanga定義論争とは無縁っぽい。

その一方で辰巳ヨシヒロや谷口ジローの作品はcomics枠になってる(ショップによって差はあるけど、翻訳版を出してる会社のサイトではそういうあつかい)。

つまり、ドイツにおいては「manga=日本産のコミック」ではない、という事だ。

mangaとは、「もともとは日本から始まった、大きな瞳の無国籍なキャラクターが活躍する、白黒で右から左にコマを割るスタイルのコミック」を指す言葉なのだ。(OGL-mangaはセリフが横書きのドイツ語にもかかわらず、右→左に進行する作りのものが多い)

自らをComiczeichnerではなくmanga-kaと呼ぶOGL-manga作品を描くドイツ人は、他に表現のしようがないから自然にそう名乗っているだけで、OEL-manga作家達のアイデンティティをめぐる忸怩たる思いとはほとんど無縁なのだ。(ドイツのmanga-kaにはオリジナル作の発表場所はあるけど、manga描いてるだけじゃ食えない、ってトコに変わりはないんですが)

しかし、こうして見るとあらためて北米のmanga論争って不毛かつ異常だよなぁと。

付記)『ベイビーズ・イン・ブラック』の翻訳者・岩本順子さんのインタビューによると、やはりドイツには元々のオリジナルコミックの描き手や市場自体が極小らしい。