蜘蛛之巣城

Read Me Right-to-Left!

Seven Seas EntertainmentのOEL-manga

Alice's Adventures in Wonderland And Through the Looking-Glass Alice's Adventures in Wonderland And Through the Looking-Glass #1

右→左進行manga話のつづき。
Tokyopopと並ぶOEL-manga界の雄、Seven Seas Entertainment。

出版業への愛も若手作家への責任もなく撤退したくせに、ショウビズワナビの社長が映像化権にしがみついて醜態さらしてるTPと違って、今も地道にmanga系オリジナル作品を粛々と続けているSSEの事を何故今まで取り上げなかったかと言うと………いや、あそこの作品って、ぱっと見が90年代テレ東午後6時台あかほりさとる系っぽい雰囲気なもんで。
オイラ、あの時代の日本のオタク状況に耐えられずにヒーローアメコミにハマった人間なんですもん~~。

しかしこれも良い機会と思ってざっと調べてみました。


SSE作品は大体が公式サイト内のSEVEN SEAS EBOOK LISTにプレビューページと各種電子書籍ストアへのリンクつきでリストアップされています。
また、SSEのOELウェブmangaポータルZOOM COMICSでは作品の結構な部分が無料公開されています(運営費は広告費でまかなっている模様)。

以下、日本や韓国のライセンスド作品を除外したオリジナル作品を一通り解説。

アオイハウス

Aoi HouseAoi House #1

Aoi House

2005年にAdam Arnold原作、Jim Jimenez作画で発表されたものを原型に、二代目作画担当Shieiを迎えてブラッシュアップ、長編化したもの。

Adam Arnoldは長年アニメファンコミュニティでウェブジン発行を担当していたような人物で、赤松健やコゲどんぼの大ファン。内容は推して知るべしというか。

学生寮を追い出されて途方にくれる大学生二人が転がり込んだアパートはanime-otakuの腐女子の巣窟で…という、アメリカ版ハーレム下宿もの。


オタクカルチャーの中を泳ぎ回る男性二人組、彼らと恋愛未満の関係をゆらゆらする美少女軍団… というあたり、 Megatokyo(2000年8月から連載開始)の影響も多分にあるかもしれないが、ああいうセンシティブな作風ではなく少年誌のハチャメチャラブコメ風。

本編4巻で円満に完結後、 Adam Arnoldは世界観を共有するParanormal Mystery Squad (作画 Comipa)、とVampire Cheerleaders (作画 Ian Cang)を連載。

アメイジング・エージェント シリーズ

Amazing Agent Luna Omnibus Amazing Agent Luna Omnibus #3

Amazing Agent Luna &Amazing Agent Jennifer
現在の看板作品はおそらくこれ。

夫婦コンビ作家 Nunzio DeFilippisChristina Weirは、もともとディズニーチャンネルの『キム・ポッシブル(2002年)』の企画に関わったり、2003年にはマーベルのTSUNAMIレーベル用にThe New Mutants, vol. 2 (Academy X の前身)のシリーズ立ち上げライターをつとめたりと、十代の学園群像ものやスパイものの得意な作家。

彼らがSSEで開始したのは海賊もののDestiny's Hand(作画 Mel Calingo)と SFものLast Hope(作画 Kriss Sison)、そして2005年にシリーズ開始の16歳の少女スパイ・ルナを主人公にした学園アクションAmazing Agent Luna(作画 Shiei)。


Amazing Agent Jennifer Amazing Agent Jennifer #1

Destiny's HandもLunaも 全12巻完結予定のシリーズだったが、2009年1月のインタビュー記事によると「OELの売れ行き不振」を理由にDestinyは全3巻完結、Lunaは5巻で一旦終了という決定がなされた。

しかしLunaは延命し、シリーズ続行。2010年にはルナの遺伝子上の母親を主人公にしたプリクエルのスピンオフシリーズAmazing Agent Jennifer(作画 Kriss Sison)も開始。SSEのKindleへの早期参入(2009年9月Kindle 2時代から)による安価で手軽な電子版の存在が後押ししたのかもしれない。

更にヴァンパイアブームに乗ってか作画Rhea SilvanでDracula Everlastingも開始と忙しい。

ホロウ・フィールズ

HollowFields Hollow Fields #1

Hollow Fields
Madeleine Roscaのオリジナル作品。ごく普通の少女ルーシー・スノウが手違いからマッドサイエンティストの養成学校に入学してしまい…というコメディ。外務省主催の第1回国際漫画賞奨励賞受賞作。


マドレーヌ・ロスカはフルカラーのオリジナルwebコミックRise From Ashesを自サイトで連載中。


Tor Books社刊のThe Clockwork Skyアニメーショントレーラーがプロモーションとして制作されています)

東南アジアのmanga系アーティスト達

あとは概ね打ち切り作品ですが…

SSEの作画担当者はオーストラリア出身のマドレーヌ・ロスカとUSA在住2名をのぞけば

  • Shiei (USA) Aoi HouseAmazing Agent Luna
  • Michael Shelfer (USA) Dead AlreadyVampire Cheerleaders Must Die!
  • Rhea Silvan (インドネシア)Dracula EverlastingInVisible、他社ではもっぱらYAOI作品
  • Jennyson Rosero (シンガポール)No Man's LandFree Runners
  • Edward Gan (マレーシア)The OutcastAvalon
  • Kriss Sison (フィリピン)Amazing Agent JenniferLast Hope、Del Reyで爆丸のコミカライズなど
  • Ian Cang (フィリピン)Vampire Cheerleaders
  • Jhomar Soriano (フィリピン)Arkham WoodsMr. Grieves
  • Aldin Viray (フィリピン)Captain Nemo
  • Roland Amago (フィリピン)Moonlight Meow
  • Elmer Damaso (フィリピン)RavenskullTen Beautiful AssassinsUnearthlySpeed Racer

…と、みごとに東南アジア軍団。おそらく個別にスカウトしているのではなく、現地のスタジオと契約していると思われ。

ショーネンマンガWolverineのウィルソン・トルトサはフィリピン、ショージョマンガX-MenのAnzuはインドネシアだったし。2008年頃からアメリカのコミック界での東南アジアスタジオの躍進が著しい訳ですが。

LR⇔RL

Tokyopopのグローバルmangaはロサンジェルス社制作の英語コミックは左→右進行、ドイツ支社制作のドイツ語mangaは右→左進行、東京制作の日本語mangaは右→左進行。
そしてSSEが東南アジアのスタジオに作画をまかせたOEL-mangaも右→左進行。
「manga読者は右→左進行になれているから」という理由からだろうか。

manga系のアマチュアウェブコミックを見ていると、東南アジア在住作家の描く作品にはテキストが横書きにもかかわらず右→左進行が多い。ドイツのは混在(純少女マンガには右→左進行が多い印象)。

発注してくる出版社が右→左指定だから、読み手も描き手も「mangaとはそういうもの」という意識が出来上がってしまってるんじゃないかなーと。

ところで、今回改めてざっと作品群を見て回った処「90年代あかほり系っぽい」というのは、どうも Shieiのアートスタイルから受けた印象に過ぎなかったようで。中身はそうでもないみたい。偏見スマソ。

特にアメイジングエージェント・シリーズ は、『キム・ポッシブル』と『ニューミュータンツ』の流れから誕生した作品であり、ライターのNunzio DeFilippisとChristina Weirは当サイトでもプッシュしているジェン・リー・クイック先生の商業デビュー作Once in a Blue Moon(Oni Press)の原作者でもありと、2000年代のカートゥーン、ヒーローコミック、mangaの交錯点に位置する作品なのだなぁと、認識を改めた次第。今度じっくり読んでみます。