蜘蛛之巣城

和ネタmanga~その前に

ウルヴァリン SAMURAIは何であんなゴチャゴチャした脚本にしちゃったんスかねー。
原作通りシンプルなピーチ姫奪回ものにして、工夫を凝らしたアクションとエキゾチックジャパン描写で魅せつつ2時間以内に収めてれば、気持ちいいエンタメ映画に仕上がったろうに。


…てなワケで、予告通り「日本ネタの海外manga」について書く前に、日本ネタのアメコミと初期OEL-mangaについて整理しときましょう。

ニンジャ、サムライ、怪獣…から美少女とパワードスーツ期

 Manga Mania #1

90年代に Dark Horseから刊行されていたmanga関連情報誌。表紙のイカスGODZILLAはアート・アダムズ画

otakuムーブメント以前の商業アメコミにもしばしば日本ネタが登場しました。

その頃は80年代のNinja ブームやベスト・キッドのヒット等を受けた流行の取り入れだったり、子連れ狼リスペクターなフランク・ミラー(57年生まれ)や怪獣博士のアート・アダムズ(63年生まれ)、日本ネタに懲りまくっていたウィリアム・ツッチー(66年生まれ)が趣味性を発揮したりで、まぁ基本的にオリエンタリズムを味付けとして使っていたもの。

それとは別口に90年代のotakuムーブメントの真っ只中で、いわゆるmanga-styleの創作をしたのが、Ninja High School(87年~)のベン・ダン(64年生まれ)やDirty Pair(89年~)のアダム・ウォーレン(67年生まれ)。

(この当時は「メインストリーム」のヒーローコミックの作画にも、「集中線・スピード線」が取り入れられたりという流れも有。)

そして更にその下の世代のジョー・マデュレイラ(74年生まれ)や今は亡きDreamwave Productions(96年~05年)、今も精力的に活動中のUDON Entertainment(00年~)になると、アニメに加えてデジタルゲーム文化の影響が顕著。マデュレイラに至っては、活動の中心をゲーム業界に移しちゃったし。


しかしながら、日本のオタク文化の影響をうけつつも、ニンジャハイスクールの舞台はアメリカで主人公もアメリカ人。90年代のanimeブーム時代に制作された商業作品は80年代OVA調のネタや絵柄を導入しつつも舞台はあくまでアメリカだったり遠未来のどこかだったり。

ショージョmangaと美少女ゲームを経由して…

Megatokyo #6

そういう商業作品とは別に2000年代からはWebで直接manga調のコミックを発表する若手が出てきて、その中でも多くのファンを獲得して商業出版社からTPBが出版されたのが、Fred Gallagher(68年生まれ)のMegatokyo(00年~)、Gina Biggs作のRed String(02年~12年)の2作。

ギャラガーのメガトーキョーは日本製ギャルゲの影響が顕著、レッドストリングは少女マンガの影響が顕著で、どちらも日本が舞台。

メガトーキョーの主人公はアメリカ人青年2人組だが、彼等は日本で学校教師を務め、セーラー服の女子高生達と交流しながらファンタスティックな事件の連続に翻弄される。

レッドストリングの主要登場人物は全員日本人で、ある日突然高校生のヒロインが親同士の決めた「婚約者」と引き合わされるところから始まる恋愛模様と少年少女の成長が描かれる。


メガトーキョーは「マチズモの国・アメリカ」の男性でありながら、少女マンガや泣きギャルゲ好きという感性の主人公が「otakuの国・ニッポン」という異界で巻き込まれる様々な事件を描く話。

「ここじゃないどこか」への旅を通じて自己発見する「ゆきて帰りし物語」の「ゆきて」状態がリアルとバーチャル両面で複雑化しつつ継続中で、最終的に主人公二人が宝を携えて「帰りし」するのか、行きっぱなしで妻を得て現地に定住する道を選ぶのかは不明ですが、設定上日本が舞台である事に積極的な意味がある話。


 Red String #1

レッドストリングに関しては「親の決めた婚約者」という設定は現代アメリカが舞台の学園ドラマではなりたたないし(現代日本でも、旧家や政治家一族、何かの家元等の特殊な家庭以外では「親の決めた婚約者」なんてないんだけど)、恋愛の描き方に関して「デート文化の国・アメリカ」とは違う「曖昧な感情」が描ける故の舞台選択なのかも知れませんが…。

スクールカーストや人種、宗教、親の政治的態度等、アメリカのハイスクールを舞台にすると描かずに済ませられないメンドクサイ問題をオミットした話作りの為の舞台選択なのか?

「日本式恋愛ノベルゲーム」のShira Oka: Second Chances(2010年 Okashi Studios)やKatawa Shoujo(2012年 Four Leaf Studios)が日本の学校を舞台にしているのも、そのあたりが理由なのか…?


こちらはフランスの商業mangaですが、 2006年に開始されたJenny作のフレンチ少女漫画Pink Diaryは「まどか視点のきまぐれオレンジロード」のような、日本が舞台で主要登場人物が全員日本人の作品。

三角関係の中心の男が曖昧な態度を保ったまま人間関係が続くところが日本式恋愛漫画的なのか…と思ったけど、それを言ったらアメコミクラシックのArchieも男1×女2の永遠の三角関係だし。

このプロットならフランスの学園ドラマでも描けると思うんだけど…私にフランスの学校生活に関する知識がないので、ここらへんはよくわからない。

付記)jenny先生の近作は魔法少女もののSara et les contes perdusなんだが、画風がセングラ当時の水谷とおる(甲斐智久)みたいになってて当惑した。ヒロインにはアホ毛もあるよ!

ドイツのショージョmanga

しかしまぁ、英語圏仏語圏で商業出版のフィールドまで進出してきた日本が舞台のmanga作品はこれくらいなんですが、数ヶ月前に腰をすえてドイツ語圏のmangaについて調べた際に驚いたのは、日本名のキャラクターの登場率が異常に多い事でして…。

ドイツの商業mangaは一部を除き同人作品との境界があいまいというか、編集と打ち合わせしながら作り上げていく日本式メソッドではない為、玉石混交ハンパないワイルドな世界なのですが。

当サイト内の関連記事:独逸MANGA 2012-6-14

クリスティーナ・プラーカの『ヨーネン×ロック』みたいに日本が舞台で主要登場人物が日本人の作品。
ナタリー・ヴォームスベッヒャーの『雨のち恋ゴコロ』みたいにドイツが舞台の学園ラブコメで、ヒロインの憧れの王子様ポジション(結局アテ馬)のキャラが日系人という作品。

…というパターンの他にも、

どこの国が舞台なのかイマイチよく分からない設定の話だけど登場人物中に日本名のキャラがいる。
これは伝統的なドイツ名じゃないよなぁ…DQNな厨ネーミングなのかなぁ?というキャラクターが多数登場する作品で、しかもそのキャラの通う学校の制服がセーラーカラーのデザインで、これって一体何処の国の話?
…というのも複数。


こういうのは、過去のエキゾチックジャパンネタ導入時代アメコミの「エンタメ経由の偏った日本知識の反映(かなりガチな誤解)」とはまた別の、「(現実の日本とは別モノである事は百も承知の上の)manga/anime作品世界内『日本』のお約束設定の導入」なのかなぁと。

現実の日本や日本文化に憧れてどうこうというよりも、あくまで創作世界における「お約束」、「ユルめの共有ルール」。

非日本語圏のmanga系ウェブコミックホスティングサービスに投稿している南米や東南アジアのアマ作家による「日本が舞台の作品」の多さを見るに、そういう風に考えないとちょっと咀嚼できない。

ただ、自分的には、そこに「ユルく閉じたオタクの内輪感」を感じるのがちょっとなぁ…。というアレコレは次回(多分)。