翻訳道楽

ラファエル・サバチニ著作リスト

明治期

1902年(明治35年) The Suitors of Yvonne17世紀、ルイ14世治世下のフランス。決闘騒ぎを起こしたガストン・ド・リュイーヌは枢機卿マザランの思惑に利用されパリからの逃亡を余儀なくされる。
1904年(明治37年) The Tavern Knight17世紀半ば、清教徒革命時代のイングランド。チャールズⅡ世の英国脱出を助けたクリスピン・ガヤルドはクロムウェル軍の報復を退けながら再起の時を待つ。

1920年にイギリスで映画化(Maurice Elvey監督)
1905年(明治38年) Bardelys the Magnificent17世紀半ばのフランス。ラングドックの反乱収拾の為にロクサランヌ姫を篭絡せんとするルイ13世。マルセル・バルドリス侯爵は巳が領地全てを賭けて三ヶ月以内に姫の心を捕えて見せると広言するのだが…。

キング・ヴィダー監督 ジョン・ギルバート主演『Bardelys the Magnificent 剣侠時代(1926年)』原作

酒席での売り言葉に買い言葉の結果、生意気な主人公が財産全てを賭けて姫君の許に向かうが、苦難の姫君に対する同情によって企みと恋の板ばさみに…という導入は 原作:手塚治虫 漫画:北野英明による「少女フレンド版『リボンの騎士』(1967年)」に似ているが、何らかの影響があるのだろうか?(なかよし版のリボンの騎士には「海賊ブラッド」が登場するくらいなので)
1906年(明治39年) Trampling of the Lilies18世紀末フランス革命前夜。ヴァイヨンは雇い主であるベルクール侯爵の娘スザンヌと恋に落ちるが、侯爵に辱めを与えられた上解雇される。四年後、革命の闘士となったヴァイヨンは侯爵と再会する。
1907年(明治40年) Love at arms15世紀末、ボルジア家全盛期のイタリア。グイドバルド・ダ・モンテフェルトロ統治下のウルビーノが舞台。
1908年(明治41年) The Shame of Motley15世紀末、いわゆる「白い結婚」でルクレチアがジョヴァンニ・スフォルツァに嫁していた頃のペーザロ宮廷を舞台にした活劇。道化に身を落とした貴公子ラッツァロの復讐譚。

『Boys' Life』というボーイスカウト向け雑誌に挿絵入りで連載された、主人公の一人称で書かれた冒険活劇。ラノベの元祖だろうか。
1909年(明治42年) St Martin's Summer17世紀初め、ルイ13世治世下のフランス。『三銃士』ダルタニアンの従兄弟である女嫌いの中年剣術家マルタンは摂政女王マリー・ド・メディシスの命を受け、コンディヤック侯爵夫人の手中から女子相続人ヴァレリー姫を救出する。
1910年(明治43年) Mistress Wilding17世紀末イングランド。アンソニー・ワイルディングは新婚の花嫁を残してモンマス公の反乱に参加するのだが…。
1911年(明治44年) Lion's Skin1721年イングランド。英国のオスターモア伯爵とフランス貴族の娘アントワネットとの間に生まれたジャスティン・カリルは、父の旧友であるリチャード・エバラード卿によってフランスで育てられた。ジャスティンは不幸な死をとげた母の復讐の為に、未だ見ぬ実父と腹違いの弟のいるイングランドに向かう。
1912年(明治45年) The Life of Cesare Borgia チェーザレ・ボルジアの評伝。それまでの「冷酷な暴君」「毒殺魔」「近親相姦」等の俗流イメージを覆し、「善悪を超越した知的でスマートな名君」としてのチェーザレを描いている。

この研究書や小説、戯曲内でサバチニの描き出したチェーザレ像は、発表当時はポピュラーイメージとのギャップのせいで叩かれたりもしたらしいが、現代のエンタメに登場する「かっこいい」「華麗な」チェーザレ・ボルジア像の源流のひとつになっているのではないだろうか。
1912年(明治45年) The Justice of the Duke チェーザレ・ボルジアを狂言回しにした短編小説七作をまとめたもの。
「The Honour of Varano 蜥蜴の誉れ」、 「The Test フェランテの試罪」、 「Ferrante's Jest フェランテの悪戯」、 「Gismondi's Wage ジスモンディの報酬」、 「The Snare 名誉の殺人」、 「The Lust of Conquest 覇者の愉悦」、 「The Pasquinade パスクイーノは詠う」

kindle版 ボルジアの裁き Vol. 1(翻訳版)
kindle版 ボルジアの裁き Vol. 2(翻訳版)

大正期

1913年(大正2年)The Strolling Saint16世紀イタリア。イタリア戦争で反教皇派として戦った父と狂信的なカトリックの母とを持つアゴスチノは、母の胎内にいるうちに神への捧げものとされ、世間から隔てられた環境で育った。しかし母の束縛を離れて俗世に出たアゴスチノはやがて中道を見出し父の名誉を回復する。
1913年(大正2年)Torquemada and the Spanish Inquisition スペイン異端審問所初代長官トマス・デ・トルケマダの評伝を中心に、政敵であるイギリスやオランダ側のプロパガンダによって従来「残虐な狂信者集団」としてイメージされてきたスペイン異端審問について、資料に基づき公正に実像を探った研究書。
1914年(大正3年)The Gates of Doom18世紀初めのイングランド。スチュアート王家に対する厚い忠誠心を持つキャプテン・ハリー・ゲイナーはジャコバイトの密偵として活動していたが、ポーンスフト卿の陰謀により愛する女性と任務の板ばさみに追い込まれる。

1919年にイギリスで映画化(Sidney M. Goldin監督)
1915年(大正4年)Banner of the Bull チェーザレ・ボルジアを狂言回しにした中編小説三作をまとめたもの。
「THE URBINIAN ウルビーノの錬金術師」、 「THE PERUGIAN ペルージャの逃亡者」、 「THE VENETIAN ヴェネチアの暗殺者」

kindle版 ボルジアの紋章(翻訳版)
1915年(大正4年)The Sea Hawk16世紀後半、イングランドと地中海。サー・オリバーは愛するロザムンドの兄を殺害した罪を着せられた上に誘拐され、スペイン海賊の奴隷にまで身を落とす。スペイン船を襲ったオスマン海賊に気に入られアルジェリア太守の保護を受けたオリバーは、やがてサカル・エル・バハル(海の鷹)と呼ばれる大海賊となる。

フランク・ロイド監督、『The Sea Hawk シー・ホーク(1924年)』原作
1940年にエロール・フリン主演で同タイトルの映画が撮られているが、リメイクではなく全く別の脚本作品

1930年に刊行された改造社の世界大衆文学全集(第52巻)に、小田律 先生による翻訳版『海の鷹』が収録されているが、完訳かどうかは不明。
その後幾つかの児童文学全集に収録された中山光義 先生の『海のたか』は大幅なアブリッジ版。
1917年(大正6年)The Snare 19世紀初め、ポルトガル。イベリア半島に上陸したサー・アーサー・ウェルズリー少将(ウェリントン公)指揮下のイングランド軍はナポレオンの密偵に撹乱され、副官オモイは義弟を銃殺せざるを得ない立場に追いやられるが…。
1917年(大正6年)The Historical Nights' Entertainment, 1st Series 「歴史実話を極力創作要素を排して短編小説形式で描く」をコンセプトにしたシリーズ
詳細は別ページを参照:ラファエル・サバチニの歴史夜話 1
1919年(大正8年)The Historical Nights' Entertainment, 2nd Series 「歴史実話を極力創作要素を排して短編小説形式で描く」をコンセプトにしたシリーズ
詳細は別ページを参照:ラファエル・サバチニの歴史夜話 2
収録作品のうち何作かは大佛次郎による翻訳が雑誌掲載されたらしい。
1921年(大正10年)Scaramouche18世紀後半、フランス革命前夜。『スカラムーシュ (創元推理文庫 513-1)』

1923年ににレックス・イングラム監督で映画化『Scaramouche スカラムーシュ
1952年にジョージ・シドニー監督で映画化『Scaramouche 血闘

尚、原書はオリジナル英国版と短縮版の米国版(二章まるごと&他の幾つかのシーンが削除)の二種類があるが、大久保康雄 先生による翻訳版は米国版を底本としている。
1922年(大正11年)Captain Blood
[a.k.a. The Odyssey of Captain Blood]
17世紀後半イングランドとカリブ海。アイルランド人医師ピーター・ブラッドは、モンマス公の乱に参加し負傷した患者を治療した責めを負い、自らも謀反人としてバルバドス島に奴隷として売り飛ばされてしまう。後にスペイン船を奪取して仲間達と共に脱走した彼は、大海賊キャプテン・ブラッドとしてカリブ海に勇名を轟かせる事となる。

1924年にDavid Smith監督で映画化
1935年にマイケル・カーチス監督、エロール・フリン主演、エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト音楽で映画化『Captain Blood 海賊ブラッド
1991年に露仏合作、Andrei Prachenko監督で『Odisseya Kapitana Blada』のタイトルで映画化
他にもスピンオフ作品多数

kindle版 海賊ブラッド(翻訳版)
1923年(大正12年)Fortune's Fool 17世紀半ば、イングランド。チャールズⅠ世の死刑宣告への署名者として有名な父を持ち、自身もクロムウェル軍の兵士であったランダル・ホールズにとって、王政復古したイングランドでの生活は絶望的な状況にあった。亡命資金を得る為にバッキンガム公から与えられた有名女優の誘拐という卑劣な任務を引き受けたが、その女優はランダルがかつて愛したナンシー・シルベスターだった。

1916年にThe Scourgeのタイトルで書かれた中篇を1922年にGeoffrey H. Malins監督で映画化、後に長編小説としてリライト。
1924年(大正13年)The Carolinian 18世紀後半、アメリカ独立戦争。英国領カロライナ植民地の物語。
1925年(大正14年)The Tyrant 1930年11月にブロードウェイの Longacre Theatreで上映された四幕劇の脚本。『The Justice of the Duke ボルジアの裁き』収録の「The Lust of Conquest 覇者の愉悦」 を舞台向けに改作したもの。

サバチニ自身による長文の前書きで、自分の描くチェーザレ像がしばしば俗流イメージとギャップがあると批判の対象になりがちな事について、各種資料を挙げて反論している。
1926年(大正15年)Bellarion the Fortunate
[a.k.a. Bellarion]
15世紀初頭、北イタリア。修道院育ちの孤児ベラリオンはパビアでの学問の為に旅に出るが、その途上でひょんな事からジャン・マリア・ヴィスコンティの陰謀から逃れんとするヴァレリア姫を守る冒険に巻き込まれる。

昭和期

1927年(昭和2年)The Nuptials of Corbal 18世紀後半、フランス。革命勃発により、男装して国外脱出をはかるクレオニー・ド・モンソルビエ嬢の冒険。

1936年に英国でThe Marriage of Corbalのタイトルで映画化(Karl Grunes監督)、米での公開時はThe Prisoner of Corbalに改題
1928年(昭和3年)The Hounds of God 16世紀後半、イングランドとスペイン。コーンウォール沖に漂着したドン・ペドロ・デ・メンドーサ・イ・ルナはトレヴァニオン伯爵に捕らえられるが、ペドロは伯爵令嬢マーガレットをさらって逃亡する。スペインの異端審問官の手に落ちたレディ・マーガレットを救う為、許婚のクロスビー卿は女王エリザベスの助けを求める。
1929年(昭和4年)The Romantic Prince15世紀半ば、ブルゴーニュ公国のシャルル勇胆公とフランス王ルイ十一世が権謀術策を戦わせていた時代。ヘレノ公爵アントワーヌ・エグモントは騎士道の理想を追求する人物だった。許婚のカトリーヌ・ド・ブルボンの不貞を理由に結婚を拒否したアントワーヌは、フランドルでフラマン人商人の娘ヨハンナと恋に落ちた。しかし彼等は間もなく陰謀に巻き込まれて行く。
1930年(昭和5年)The King's Minion
[a.k.a. The Minion]
17世紀初頭のイングランド。ジェームズⅠ世の宮廷でのロバート・カーの栄華と没落。
1931年(昭和6年)Scaramouche the Kingmaker『スカラムーシュ』の続編。18世紀後半、フランス。 アリーヌへの愛の為に革命を捨てたアンドレ=ルイであったが、時代は恐怖政治へと突き進んで行く。ジャン=ピエール・ド・バッツ男爵の密偵として革命政府相手に謀略を仕掛けるアンドレ=ルイの運命は?
1931年(昭和6年)The Chronicles of Captain Blood
[a.k.a. Captain Blood Returns]
Captain Blood のスピンオフ短編集

『The Blank Shot カリブの砲声』、 『The Treasure Ship 宝物船サンタ・バルバラ号』、 "The King's Messenger"、 "The War Indemnity"、 "Blood Money"、 "The Gold at Santa Maria"、 『The Love Story of Jeremy Pitt ジェレミー・ピットの恋』、 "The Expiation of Madame De Coulevain"、 "The Gratitude of Monsieur De Coulevain"、 『Gallows Key 絞首台礁島』

kindle版 海賊ブラッド外伝(翻訳版)
1932年(昭和7年)The Black Swan 17世紀後半、イングランドとカリブ海。プリシラ・ハラビンの乗るケンタウルス号は、カリブ海で恐れられている海賊トム・リーチのブラック・スワン号に捉えられる。同乗していた謎の男シャルル・ド・ベルニの機転でプリシラは救われ、身を守るために彼の妻を装う事になる。果たしてシャルルの正体は?

1942年にヘンリー・キング監督 タイロン・パワー主演、『The Black Swan 海の征服者 』のタイトルで映画化しているが、ほぼオリジナル脚本
1933年(昭和8年)The Stalking-Horse17世紀イングランド。ジャコバイトの過激派によるオレンジ公ウィリアム暗殺の陰謀。
1934年(昭和9年)Venetian Masque 18世紀後半、ナポレオン軍支配下のヴェネチア。偶然にもフランスの密偵の身分証を入手した英国系フランス人貴族マルク・アントワンは、二重スパイとして反フランス工作に従事する。
1934年(昭和9年)Heroic Lives 実在偉人伝連作

Richard I (獅子心王リチャード)、 Francis of Assisi (アッシジの聖フランチェスコ)、 Joan of Arc (ジャンヌ・ダルク)、 Sir Walter Raleigh (ウォルター・ローリー卿) Lord Nelson (ホレーショ・ネルソン提督)、 Florence Nightingale (フローレンス・ナイチンゲール)
1935年(昭和10年)Chivalry15世紀イタリア。コロンビーノは傭兵でありながら騎士道精神を重んじる青年だった。しかし己に科した規範の為に係わり合いになる婦人達に次々と裏切られ…。
1936年(昭和11年)The Fortunes of Captain Blood Captain Blood のスピンオフ短編集

"The Dragon's Jaw"、 "The Pretender"、 "The Demonstration"、 "The Deliverance"、 『Sacrilege 枢機卿の身代金』、 "The Eloping Hidalga"

kindle版 海賊ブラッド外伝(翻訳版)
1937年(昭和12年)The Lost King 18世紀後半、フランス。 ルイ・ダヴィッドの弟子である画学生にして王党派の密偵でもあるフロランス・ド・ラサールは、ジャン=ピエール・ド・バッツ男爵の命を受けて幽閉された少年王ルイ=シャルル誘拐の任務を引き受ける。

1958年~1959年にかけて英BBCで30分×全6回のミニシリーズでドラマ化

note連載版 『The Lost King 失われし王 ルイ=シャルル』第一部 タンプル塔の少年
note連載版 『The Lost King 失われし王 ルイ=シャルル』第二部 さまよえるフランス人
1937年(昭和12年)The Historical Nights' Entertainment, 3rd Series 「歴史実話を極力創作要素を排して短編小説形式で描く」をコンセプトにしたシリーズ
詳細は別ページを参照:ラファエル・サバチニの歴史夜話 3
1938年(昭和13年)The Sword of Islam16世紀のジェノヴァ及び地中海。 「地中海の鮫」こと神聖ローマ帝国の傭兵提督アンドレア・ドリアとバルバリア海賊を率いる「イスラムの抜かれし剣」ことオスマン帝国海軍基地長官トルゴウド=レイスの戦い。
1940年(昭和15年)The Marquis of Carabas
[a.k.a. Master-at-Arms]
18世紀末、フランス革命後のイングランドとフランス。 イングランド育ちのフェンシング師範カンタン・デ・モルレーは、ある日自分がフランスのさる侯爵領の相続人である事を知る。ド・ピュイゼイユ侯爵に協力しキブロンへの王党派部隊上陸作戦に参加するカンタンであったが、彼を待っていたのは凄惨なヴァンデの戦場だった。
1941年(昭和19年)Columbus 15世紀末、スペイン。スペイン女王イサベラとクリストファー・コロンブスの物語。

1949年にデイヴィッド・マクドナルド監督『Christopher Columbus コロンブスの探検』原作
1944年(昭和21年)King in Prussia
[a.k.a. The Birth of Mischief]
18世紀初め、プロイセン王フリードリヒⅡ世の青年期の物語。
1946年(昭和23年)Turbulent Tales エラリー・クイーンの『Queen's Quorum クイーンの定員』の中で歴史ミステリ短編集の代表的一冊として挙げられている。

"The Kneeling Cupid"、"By Ancient Custom"、"The Scapulary"、"The Remedy(Captain Blood のスピンオフ)"、"The Constable of Chard"、"The Catchpoll"、 "Loaded Dice"、"Casanova's Alibi"、"The Open Door"、『The Lord of Time 時の主』、"The Death-Mask"、"The Alchemical Egg"、 "The Ghost of Tronjolly(1949年にBBCでTVドラマ化)"、 "The Luck of Capoulade"、"The Passport"、"The Recoil(The Lost Kingのスピンオフ)"
1949年(昭和12年)The Gamester 18世紀フランス。ルイ十四世の死後に起きたインフレーションと金融恐慌の時代。 スコットランド出身のジョン・ローは、ロンドンで決闘騒ぎを起こした結果フランスに逃れる事になる。彼はやがて国家財政再建という大博打に乗り出す。