<殺し屋教師・田中一朗>シリーズに関する基本情報

あらかじめ断っておきますが、まともに説明すると長いよ!

   

前史~清水くん

時は90年代、秋田書店の月刊ホラー少女漫画誌(当時)『サスペリア』には、「本格推理劇場」という読みきり作品の枠がありました。
1997年5月号の本格推理劇場に登場したのが、『死体の落し物』というタイトルの短編。作者表記は「原作:山崎理、作画:井澗千代美」。

アニメ監督・山崎理(やまさき おさむ)はアニメ企画・製作会社「南町奉行所」の代表であり、当時秋田書店の雑誌で『紅いハヤテ』『霞くんの危険な生活』などのメディアミックス漫画の企画・原作を手がけておりました。それらの作品でコンビを組んだ漫画家が、井澗千代美(いたにちよみ)。

『霞くんの危険な生活』などの山崎理作品には、「国家特務保安局(通称・特保)」という組織がしばしば登場します。
警察庁・検察庁の上に位置する、この架空組織の女性捜査官を主人公にしたミステリシリーズが『早乙女あずさ事件簿(ミステリーファイル) 』。この作品の後期に端役として登場する捜査官「清水くん」を主役にすえた、一作限りのお遊び的作品が『死体の落し物』でした(早乙女あずさシリーズについてはトリビアページ参照)。

尚、この作品は山崎理ワールドの設定を用いたスピンオフである為、雑誌掲載時には原作者として山崎理のクレジットがありましたが、実際に脚本を担当したのは『ハンドメイド マイ』『DTエイトロン』などの脚本家であり、『刑事コロンボ』マニアとして有名なマルチ映像ライター・川守田游(かわもりたゆう)。

『死体の落し物』は好評を得て、7月号に第二作『コギャル殺人事件』が掲載。この作品は『砂沙美☆魔法少女クラブ』のシリーズ構成や『Fate/stay night』の脚本家である岡田麿里(おかだ まり)がトリックのネタ出しに協力しており、「脚本協力」でクレジットされていました。

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浜野くん

1997年8月増刊号 ホラーDX vol.5で推理もの読みきりの依頼を受けた川守田は、オタク美少年・浜野正悟と姉の恋人である神奈川県警の南警部補を探偵役とした学園もの『疑惑のナイフ』のシナリオを制作。
しかし土壇場で予定されていた作画者が降板、川守田とコンビを組み慣れていた井澗千代美が急遽作画を担当。

『サスペリア』本誌 1997年9月号に「清水くん」ものを執筆予定だった川守田は、トリックのネタが清水くんよりも浜野くんに向いているとして、浜野くんシリーズ第二作『ゲームオタク殺人事件』を本誌に発表。現場にはおもむかず、パソコンの前で全ての推理を行う浜野くんには「アームチェア・ディテクディブ」の称号が加わることに。

以降、「清水くん」と「浜野くん」の両探偵が『サスペリア』で交互に登場。1998年6、7月号では犯人当てプレゼント企画付クロスオーバー作品『アーバンリゾート殺人事件』が掲載。

1998年9、10月号には清水クンの過去話であり、アクションものの『必殺のジャムセッション』『必殺のソロ』の前後編が掲載されましたが、クレジットはされていなかったものの、この作品は漫画原作者・金子玲美(かねこれみ)がゴーストライターをつとめた作品でした。

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田中一朗

アクションもの前後編が好評をはくし、金子・井澗コンビは増刊号 ZOKZOK 1999年No.10に同一路線の『産休代用教師田中一朗クン』を執筆予定でした。しかし井澗の多忙により、井澗のネームをもとに井澗スタジオの海保はづき(かいほはづき)が作画を担当。長期シリーズの第一作のみ作画者が違うという事態に。

本誌に移動した「殺し屋教師・田中一朗」 シリーズは、原作は「金子レミ」、作画は井澗千代美の別名「月嶋つぐ美(つきしまつぐみ)」名義で、川守田游&井澗千代美コンビの「アームチェア・ディテクティブ浜野クン」シリーズと交互に掲載されることになりました。

ホラー誌『サスペリア』は、 2001年 11月号より国産ミステリのコミカライズに重点を置いた『サスペリアミステリー』に誌名変更します。

金子&月嶋コンビは川守田から「浜野くん」シリーズを譲り受け、2002新春2月特大号の浜野くんシリーズ『孤独の罠、蠱毒の屍(こどくのしかばね)』より、「田中一朗」シリーズと「浜野くん」シリーズが統合。
(ちなみにその後、川守田は伝説のガンプラ本・ホビージャパン別冊『HOW TO BUILD GUNDAM』にも参加していた経歴をもとに、セミレギュラーキャラ「伝説のモデラー川守田」として作中に出演)

作者たちは、「携帯電話のおかげでトリックが作りにくい現代をはなれて、昭和の日本に田中先生と音無春希をタイムスリップさせ、天才犯罪プランナーSNARKは過去に取り残された二人の子供だった、というオチをつけてシリーズを完結させる」という予定を立てていました。

しかし「サスミス読者はSFが嫌い」という編集側の意見により、路線変更。
シリーズの裏設定であった「田中先生はジェームズ・ボンドとキッシー鈴木との間の隠し子で、日本の諜報機関の長・タイガー田中の孫」を前面に出し、日本諜報機関の長・寅(丹波哲郎に酷似)や美人コマンダーアキ&キシなどのキャラクターが活躍するようになります。

尚、最終的にSNARKの正体は、「『0011ナポレオン・ソロ』の敵役・国際犯罪組織スラッシュ(THRUSH)の残党が密かに作り上げたモリアーティ教授のクローン」という結末となりました。

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天使的探偵団

「殺し屋教師・田中一朗」シリーズは本編終了後、嵯峨純子&浜野綾子&音無春希の幼稚園時代を描いた『天使的探偵団』(2003年9月特大号)と、三人の娘である嵯峨順&浜野愛&音無遥を主人公とした『天使的探偵団II』(2003年10月号)の番外編二作をもって完結する予定でした。

しかし両作品が好評だった為、この二作もシリーズ化(尚、『天使的探偵団II』より原作者名表記が「金子玲美」に変更)。
作者たちは、再び「携帯の存在しない時代のミステリ」を描くべく、音無春希一家をクローズアップしたシリーズを計画していましたが、またも予定が狂います。


シリーズの脇役・デブオタの丸田重夫を主役に、三人娘受胎の顛末を描いた『鸛(こうのとり)は舞い降りた』(2004年5月特大号)が大好評をはくし、「潜入捜査官○○田(マンマルた)」がシリーズ化。

日本諜報機関の長・寅と、大戦時代の戦友である日本最大のコングロマリット・嵯峨グループ会長が、田中一朗や丸田重夫、浜野正悟らを、日本を影から防衛するスーパーエージェント組織の幹部として養成してゆく陰謀が描かれる一方で、丸田が無自覚のうちにさまざまな事件を解決しながら、一夜の情事で数人の女性を受胎させ、優秀な庶子を量産していくエピソードが語られていきます。

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殺し屋女子大生

2005年10月特大号より、田中や丸田らの子供たちが大学生となって活躍する「殺し屋女子大生」シリーズが開始。

『サスペリアミステリー』は、2006年3月特大号より、オリジナル作品を姉妹誌に移動させ、完全に隔月刊ミステリコミカライズ雑誌として新創刊。しかし本シリーズはオリジナル作品ながら残留。

2006年3月特大号より、帰国し音無春希と結婚、音無家に婿養子に入った田中先生改め音無先生を主役とした「帰って来た殺し屋教師」シリーズと「殺し屋女子大生」シリーズが交互に掲載されています。

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初稿結び

一本の読みきりミステリから出発して、さまざまなクリエイターの手を借り、いつの間にやら長い時間軸と膨大なキャラクターが織り成す『悪魔の手毬唄』も真っ青の複雑な人間関係のドラマとなった本シリーズ。

『死体の落し物』から数えて十年の歴史を持つ本シリーズですが、複数のクリエイターが出入りする上、改名・別名使用、しかも揃いもそろって難読名ばかり(YAHOO!ブックスでは「井溝 千代美 川守田 強」になってたし)。おまけに掲載誌も路線変更や誌名変更を重ねるという波乱万丈ぶりなので、ネットで情報を得ようと思ってもひと手間ふた手間かかります。

そんな訳で、ここに新規読者の便宜と自分用の情報整理のページを作成した次第であります。


はぁ~、長かった。


(ここまで2007年6月初稿)

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そして、その後のサスペリア…

(ここからは2016年6月加筆分)
2008年11月特大号掲載の<殺し屋女子大生シリーズ/番外編> 熟女三人湯煙り殺人ツアー(始末編)をもって、事実上のシリーズ中途終了。

現代編である<潜入捜査官○○田>&<帰って来た殺し屋教師>シリーズと、 未来編<殺し屋女子大生>を平行して進めながら、全ての登場人物と伏線が収束して行く「火の鳥/太陽編」のような展開の途中でした。 スナークとの最終決着をもって美しくシリーズをまとめて欲しかったのですが…。

掲載誌『サスペリアミステリー』も定期刊行雑誌としては2012年10月特大号をもって休刊。
現実的に考えて、シリーズの続きが描かれる事はもうないでしょう。
それでもせめて、長期にわたって雑誌を支えてきた人気作品として、電子書籍での復刊及び未収録分配信を切に願います。

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