このページにはビジュアルノヴェル『うみねこのく頃に』『うみねこのく頃に散』のネタバレが記載されています

基本構造

a オリジナルボトルメール Legend & Turn

a' 八城偽書版 Legend & Turn
b 八城偽書版 Banquet, Alliance & End

真の作者・フェザリーヌの御筆先として竜騎士が執筆したゲーム『うみねこ』
a'' & b' (エンジェの過去話や探偵行を付加)+EP6~8

オリジナルボトルメール a

構想期間: 事件の19ヶ月前(85年2月頃)から
執筆時期: 86年夏以降(プロポーズ予告とバトラ復籍の報が重なってから)
対象読者: 1 バトラ 2 不特定多数
執筆理由: 自身の『正体』の暗示。構想時は過剰ストレスからの現実逃避だったが、86年親族会議時点でモロモロの条件が整ってしまったことに「運命」を感じ、実行を決意
投棄理由: 「実際に起きた事件」の真相のカモフラージュ

a: 内容はEP1、2の盤面内とほぼ同じであり、恐らくは右代宮麻里亞の一人称の手記形式と思われる。
最低でももう一作、同趣向のバリエーションが投棄された。
トータル作成数は不明(思考実験としては親族共犯者を変えたパターンで最低四作ありそうだが…)。
オリジナルにはメタ次元のベアトとバトラの問答は存在しないはず(1、2は完全な等価でなければならないので)。


EP1、2ともに「犯人が死者にまぎれるトリック」は『そして誰もいなくなった』の直接的な流用なので、ある程度ミステリを読んでいる人間ならば「犯人当て」自体の難易度は低い。その点はヤスも承知の上だろう。
「主犯」がわかれば「親族共犯者が誰か」「使用人全員共犯」も必然的に判明する。そこから犯人の「身分」も大体想像がつく。


そもそも『そして誰も~』のボトルメールは「謎かけ」ではなく「犯人の真相告白」であり、それに倣ったオリジナルボトルメールも恐ろしくひねった書き方だが「真相告白」のはずなのだ。犯人が誰かについては隠すつもりはまったくなかった。

犯人が誰かとその立場については比較的簡単に割り出せても、尚も残る謎は「使用人・嘉音とは一体『何』なのか」「犯人はなぜこんな事件を起こしたのか」「なぜ犯人は他の滞在者に碑文の謎を解くように求めるのか」であり、執筆者が本当に解いて欲しいミステリはこれだろう。

八城偽書 a' & b

構想期間: 約10年?「構想」というより、ヤスのカウンセリングとして事件直後から長期間をかけてバトラが徐々に聞き出したものが元か
執筆時期: 95年頃から98年秋まで
対象読者: 1 エンジェ 2 不特定多数
執筆理由: 1 エンジェに対する事件の真相の暗示 2 世間に対するカモフラージュ

a': まず、オリジナルボトルメールを「バトラを主人公にしたメタベアトとの論戦」という形に改作し、
b: 更にその続きとしてEP3~5の盤面+αを制作。赤字等の特殊ルールを持ち込む。

4のエンジェ投身は偽書内エピソードに過ぎず、現実には行われていない?
エンジェの六軒島への旅は偽書内には描かれていない。
EP6~8は作中現実では公表されていない。

ベルンやラムダは八城オリジナルキャラクターなのか、それ以前にネットで流布された第三者の偽書に登場するキャラを借りたのか(二次設定が公式に採用されたようなものか)は不明。探偵・ヱリカのキャラなどは先行作を拾っていそうだが。


バトラとしてはエンジェには過去と決別して平穏に生きて欲しいのが本音だが、「真相を知る権利」については否定しない。
よって偽書という形で真相を暗示し、EP4の「金蔵の三択問題」に仮託してエンジェに選択を迫る。「真相を知る権利を放棄して心の平安を取るか、無残な現実を受け入れて『最後の右代宮当主』となるか」

ノベルゲーム『うみねこのなく頃に』 a'', b' & c

執筆時期: エンジェが作中現実において己の選択を行った後
対象読者: 我々
執筆理由: プレイヤーに魔法ENDを選ばせ、「心安らかに生きるエンジェ」という幻想を黄金の真実にする

c: EP6はボトルメールと八城偽書を読んだエンジェの「ベアトリーチェの正体」に関する推理を、八城が装飾して語ったもの。
c: EP7茶会はエンジェが想定した「現実の六軒島事件の真相・最悪ver.01」(エヴァが犯人ではないにもかかわらず真相を語らず、何やら罪悪感がありげであり、一方エンジェに辛く当たる事などから推測)
c: EP8は現実の選択を行うに際してのエンジェの内面の葛藤を八城が装飾して語ったもの。

このような思考の結果、「八城十八はヤスもしくはバトラ、あるいは両方である」と結論したエンジェは八城と現実に会見。真相を知る(黄金郷のオミヤゲの扱いからして、EP8本編から直結するENDは『手品』である)。

b': 後に会見の際に語られたエンジェの学生生活や新島への調査旅行の様子等を組み込んで、八城はゲームバージョンのEP4シナリオ作成。


c: 全ては人の創りしもの、という解釈からすると、EP7本編は「神の視点から見た別次元の現実」ではなく、バトラが推論した「オレは直接にはしらねぇけど、余計なバイアス抜きで考えたら、実際の祖父さんはこんな感じなんじゃねぇか?」をヤスが受け入れるまでの過程を「異端審問官ライト」を狂言回しとして物語化したものだろう。

EP7で金蔵が理御に言うセリフ「自ら生きぬ人生ほど希薄で長いものはない」は、そのままバトラがヤスに語った言葉ではないだろうか。
金蔵の妄想に取り込まれて「ベアトリーチェ」としてバトラに獲得されたとしても、それはヤス自身の幸せではないし、そもそも現実の金蔵はヤスに対してそんな事は望んでいなかった。死に際にはひたすら父として我が子の幸せを願っていたぞと。
ライトが何度も口にする「深く考えるな、頭痛にならァ」は八城夫妻間で何度も交わされた言葉なのかもしれない(どちらがどちらに言った言葉かはわからないが)。


ところで、EP4の金蔵(中の人バトラ)が「強欲が大事」と自説を開陳してるのと、現実逃避中のエンジェが七杭強欲をパートナーにしているのはどういう関連性だろう。
エンジェが精神的に追い詰められていたのは六軒島事件10周年で世間が色々取り沙汰していた96年前後、EP4がネットに発表されたのは97年くらいか?オリジナルの偽書にはマモンとエンジェの記述はなく、エンジェとの会見後に付け足されたか。あるいはマモンとの友情エピソード自体が完全な創作か。


ヤスのボトルメールが「ひねくれた真相告白」であるのと同様に、八城がネットの海に流したボトルメールである偽書もまた「真相告白」であろう。
そして「ホワイダニットが大事」というバトラの持論は我々プレイヤーに向けたメッセージでもある。何故俺がこんな物語をバラまいたのか、考えてくれ、察してくれという。